Crossfire HD Cinematic Making Of

ゲーム業界に新規参入した開発会社、Midwinter Entertainment(ミッドウィンター・エンターテインメント)向けに、私たちは同スタジオの業界デビュー作品である「Scavengers(スカベンジャーズ)」のシネマティクスを制作しました。

本プロジェクトは、Platige Imageの通常のプロジェクトとはかけ離れた規模でした。

プロデューサーの Daria Zienowicz(ダリア・ツィノウィッツ)によると、「Crossfire(クロスファイア)」は、主にクライアントとの特殊な関係値もあり、私たちにとってチャレンジングなプロジェクトでした。、韓国の企業であるSmilegate(スマイルゲート)とのプロジェクトは初めてでした。クライアントにとって初めての大規模なシネマティクスの制作にPlatige Imageを指名していただき、私たちが制作した「Watch Dogs 2(ウォッチドッグス2)」や「Ghost Recon(ゴーストリコン)」のトレーラーで使ったスタイルと似た感じのものにしてほしいと要望がありました。

CGスーパーバイザーのHubert Zegardło(フベルト・ツェガルドロ):クライアントに指名していただたことは、とても光栄であり、名誉だと思っています。ゲームのトレーラーを制作するスタジオは他にもありますが、Smilegate(スマイルゲート)はPlatige Imageと制作することを決めてくれました。Smilegate(スマイルゲート)は今回の動画をリアルな報道映像のようなものにしたいと考えていて、それは私たちの非常に得意なスタイルでした。ディレクターのDamian(ダミアン)がまさにニュースで見るようなカメラの動かし方を熟知していて、報道スタイルでの表現が可能になりました。

世界の裏側にいるクライアントとの共同制作はいかがでしたか?

ディレクター Damian Nenow(ダミアン・ニナウ):アート・ディレクションについては、実質的に制限がなく、自由な表現が許されました。それが逆に、最大の難関でチャレンジでした。キャラクターのモデルを受け取り、クライアントがシネマティクスの大枠のスタイルを決め、戦争ドキュメンタリーや軍事機器のイベントなどのYouTube動画をいくつか送ってくれました。そこからは自由に制作していきました。

想像力を自由に発揮できることは、非常に良かったのですが、最初はなにも取っ掛かりがありませんでした。クライアントに私たちのやり方を気に入ってもらえるのか不安でしたし、また厳しい期限がありました。通常、全てにおいて、何かしらのベースとなるものが与えられるのですが、今回はそのようなものはありませんでした。クライアントから、「あなたたちの考えたアイディアでお願いします」と言われ、そのようにした結果、気に入っていただけてよかったのですが、白髪が増えてしまいました。はっきりした考資料がなかったので、私達から提案をし、インスピレーションを働かせてクライアントとコミュニケーションを取りました。

 

どこから始めましたか?

(ニナウ) :私たちは、昔からよく見られる分かりやすい時系列のストーリー展開や、単純に銃撃戦を繰り広げて逃走してといったシーンを繰り返すことは避けようと考えていました。代わりに、コラージュされたような編集が好きで、「Watch Dogs 2(ウォッチドッグス2)」のシネマティックトレーラーでも使ったスタイルで編集しました。「Crossfire(クロスファイア)」では、コラージュ編集を用いながら、クライアントが伝えたいストーリーを入れ込み表現しました。コアなコンセプトはリアルな戦場を表現することでした。

ゲームの軸はあくまでも兵士達自身で、兵士の周辺で起こる戦いがストーリーの軸にはなりません。もっともショッキングに描きたかったことは、ビデオゲームの世界とは思えないような、リアルな世界です。まるでニュースやCNN、戦争ドキュメンタリーで見られるような表現を追求しました。プレイヤーに、この戦闘フィールドの世界観をよりリアルに感じてもらいたいと思っていました。例えば砂漠やジャングルなどの遠く離れた場所を舞台にした戦争もののハリウッド映画ではなく、プレイヤー自身の直ぐ近くで起こっているように感じられる表現しました。その為に、近所の洗車場や店、建設現場の写真を撮影し、そのような身近な景色を映像の中で見ることができます。馴染みのある場所をロケーションにすることで、例えばワルシャワに住んでいるプレイヤーからソウルに住んでいる人々など、どんなプレイヤーにとっても認識しやすい場所となっています。

映像全体がミュージックビデオのようにも感じられます。

ニナウ :それが当初からの目標でした。というのも、コンセプトがミュージックビデオから生まれたからです。Imagine Dragons(イマジン・ドラゴンズ)の「Friction」という曲を聴いているときに、なんとなくムービー全体を頭の中で組み立てました。この曲を一時的なサウンドトラックとして長い間使用していましたが、クライアントはボーカルを一切入れたくない考えていたので、最終版では使用しませんでした。しかしこの曲のペースやメロディーは参考材料としては完璧でした。

そのため作曲家を見つけることは非常に難しいものでした。仮に使用していたドラマティックでエネルギー溢れる歌詞とボーカルのある曲の代わりに、インストゥルメンタルでそれ以上の曲を制作することは不可能だと思っていました。ところがPaweł(パヴェウ)(作曲家、Paweł Górniak(パヴェウ・グルニアク))はそれをやってのけました。簡単ではなかったと思いますが、出来上がった音楽は驚くほど素晴らしいものです。彼が作曲した音楽に私たちPlatigeもクライアントも一瞬で恋に落ちました。

作曲家 Paweł Górniak(パヴェウ・グルニアク)のコメント:私はプロジェクト終了間近になって参加しましたが、作業はまだ進行中だったので、キャラクターの肌がない状態の映像を使って作曲をしなければなりませんでした。まだ肌が完全に灰色だったのです。そこから各カットの動きのペースをつかむことができ、ぴったりの曲を作曲できました。

先に出来ていた映像に後から作曲した音楽ですが、人によっては作曲のほうが先だったと思うかもしれません。このトレーラーの構造はミュージックビデオに似ていてたので、私のスキルを発揮するチャンスでした。ロックの要素があり、ギターも使い、エスニック音楽を少しだけ入れたいと考えていました。リズムのベースはポップロックになります。


シーンによっては本当に写真のようにリアルに見える場面があります。アニメーションなのか、実写の映像を使用しているのか分からなくなるほどでした。

ツェガルドロ: 全てCGで、実写のシーンはありません。モーションキャプチャは使用しています。

アート・ディレクターヤブロンスキー: ハリウッドではあまり受け入れられないような、リアルのトレーラーを作りたいと思い、全てなシーンをリアルに表現しました。真実味があり、あまり魅力的でもない現実をひとつひとつ描くことは、簡単ではありませんでした。現実的で汚れた世界観を、映画のような手法でリアルに表現しています。

このようなトレーラーの制作期間はどのくらいですか?半年?それ以上?

ツィノウィッツ: このプロジェクトは、スケジュール的には、非常に難しいものでした。この作品では約100ショット使用し、4か月で制作しました。スケジューリングとスタッフィングは、ロジカルにこなす必要があり大仕事でした。なにしろ、70人以上のグラフィックデザイナーと一緒に仕事していましたから。
ツェガルドロ: 今回のトレーラーでは、合計で90~100くらいのアセットを制作しました。キャラクターや車両、武器、その他の小道具ですね。ですので、スケジュールはタイトでした。

ツィノウィッツ:
それでも、「Crossfire HD(クロスファイアHD)」は一番楽しかったプロジェクトのひとつです。皆のおかげで、楽しく仕事ができました。快適に仕事をするために必要なものをすべて用意してくれたスーパーバイザーやディレクター、私たちに信頼を寄せてくださったクライアント、そしてスキルを発揮しようとがんばってくれたデザイナー。私たちの能力と可能性を表現することができた大切なプロジェクトとなりました。